「整備の部屋」では、ロードバイクやクロスバイクの整備に関わる情報を発信します。
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目次
ロードバイクのハンドルの角度調整について①:ハンドルを「送る」「しゃくる」
はじめに:ロードバイクのハンドルの角度調整の必要性
ロードバイクのハンドルの角度調整は、主に下ハンドルの握りを調整するために行います。
下ハンドルのカーブは、ハンドルの形状(シャロー、アナトミック、アナトミックシャロー)によって異なります。
また、形状の分類は同じでも、ハンドルメーカーによってもカーブの仕方が異なります。
ハンドルを変えた時や、下ハンドルを握った時の握り心地に違和感がある場合などに、ハンドル角度の調整を行う必要が出てきます。
ロードバイクのハンドルの角度調整について①
ハンドルを「送る」「しゃくる」
ハンドルのエンド部分(下ハンドルの先っぽ部分)に着目し、下ハンドルのエンドを身体に遠ざける方向に角度調整することを「ハンドルを送る」と言います。
逆に、下ハンドルのエンドを身体に近づける方向に角度調整することを「ハンドルをしゃくる」と言います。
ハンドルを送ることによる効果
ハンドルを送ると、一例としては以下のような効果が生まれます。
・下ハンドルが遠くなる
・下ハンドルからのブレーキレバーが遠くなる
・ブレーキレバーの角度が上向きになる(=ブレーキレバーをしゃくるのと同じ効果が生まれる)
これらにより、以下のようなことが発生します。
・下ハンドルを握った時の前傾が深くなる
・下ハンドルがフロントフォークから遠くなるため、下ハンドルを持った時のハンドリングが安定傾向になる。
・下ハンドルからブレーキレバーへの指のかかりが悪くなる
・ブレーキレバーをブラケットポジション(上側から持つ)で持った時、上体が起きる
・ブレーキレバーをブラケットポジションで持った時、ブレーキレバーへの指のかかりがよくなる
・ブレーキレバーがフロントフォークに近づく上に角度が立つため、ブラケットポジションで持ったとき、ハンドリングが機敏になる
ハンドルをしゃくることによる効果
ハンドルをしゃくると、一例としては以下のような効果が生まれます。
・下ハンドルが近くなる
・下ハンドルからのブレーキレバーが近くなる
・ブレーキレバーの角度が水平に近づく(=ブレーキレバーを送るのと同じ効果が生まれる)
これらにより、以下のようなことが発生します。
・下ハンドルを握った時の前傾が浅くなる
・下ハンドルがフロントフォークから近くなるため、下ハンドルを持った時のハンドリングが機敏になる
・下ハンドルからブレーキレバーへの指のかかりがよくなる
・ブレーキレバーをブラケットポジション(上側から持つ)で持った時、前傾が深くなる
・ブレーキレバーをブラケットポジションで持った時、ブレーキレバーへの指のかかりが悪くなる場合がある
・ブレーキレバーがフロントフォークから遠ざかる上に角度が寝るため、ブラケットポジションで持ったとき、ハンドリングが安定傾向になる
ハンドルを送る・しゃくることによる効果は一例としてこのようなものがあります。変更前後が極端なポジションであれば話は別ですが、基本は概ね上記に収まるものと考えます。
また、ブレーキレバーのブラケットもハンドルへの取り付け角度を変更出来ます。
実際は、例えば「ハンドルを送りたいけどレバーの角度を変えたくない」場合は、ハンドルを送りつつ併せてブラケットを送る調整を行えば、ブレーキレバーの角度にかかるフィーリングの変更は防ぐことができます。
ロードバイクのハンドルの角度調整について②必要な工具
ロードバイクやクロスバイクのハンドルの角度調整に必要な工具は、オーソドックスなものであれば以下の通りです。
アーレンキー or トルクレンチ(必須)
所謂六角レンチです。ロードバイクやクロスバイクのハンドルの固定では、4mmか5mmが多いです。
アルミハンドルならともかく、カーボンハンドルを使うならば締め付けトルクを管理できるトルクレンチを使うのが望ましいと考えます。
水平儀、角度計(あると便利)
綿密に何度調整したいと考えている場合は、これらが必須となります。
ただ正直なところ、筆者はフィーリングで調整しています。
ちょっとだけ調整して違和感があればまたちょっと調整して、を繰り返して納得のいくポジションを出しています。
筆者がクライマー志向で、あまり下ハンドルを持たないからというのもあるかと思います。
スプリンターやパンチャー等の志向で下ハンドルを持つ機会が多い方は1°単位で調整したいものだと思いますし、そのような方であれば調整時にこれらが必要になるものと考えます。
ロードバイクのハンドルの角度調整について③実作業
ここから先は実際の作業です。
(1)ハンドルの固定を緩める
ハンドルは、ステム(ハンドルとフロントフォークを繋ぐ棒状の部品)先端部で、1個、2個もしくは4個のネジで固定されています。
ネジを扱う際の基本ですが、2個以上の場合は、均等に緩めていきましょう。
つまり、例えば4個ネジの場合は
アーレンキーで1個目のネジを半回転分緩める
→隣のネジを半回転分緩める
→対角線上のネジを半回転分緩める
→隣のネジを半回転分緩める
→対角線上のネジ(=最初に緩めたネジ)を半回転分緩める
で作業すると、ひとつのネジに負荷が集中しないため良いです。
ハンドルの固定ネジは反時計回りに回すと緩みます。逆に時計回りに回すと締まります。
以前質問されたことがあるので、一応付記。
ネジの緩む・締まるは水道の蛇口と同じ、と覚えると良いです。
(2)ハンドルの角度を変える
ある程度ネジを緩めていくと、ハンドルがぐらつきだすと思います。
ハンドルが動くようになったら、ハンドルの取り付け角度を好きな角度に調整してください。
なお、ここだ!という角度が見つかったらそこからハンドルが動かないよう手などで抑えながらネジを締める必要があります。
ハンドルをベストな角度から動かないよう抑えつつネジを締める作業を上手に行うには、ネジを緩める際に、ネジを完全には抜ききらないほうが良いです。
(3)ハンドルを固定する
ベストな角度が見つかったら、ネジを締めてハンドルを固定します。
この際、2個以上のネジの場合は緩める時同様に、均等に締めるようにしましょう。
また、特にカーボンハンドルの場合はトルクレンチを使って、ステムに書いてあるトルクでネジを締めるようにしましょう。
アルミハンドル使用でトルクレンチがない場合(本当は使うのが望ましいのですが)は、「とりあえずしっかり締めておく」のが望ましいとは思います。
乗っている間にハンドルの固定が緩んでしまうと、落車に繋がります。
トルクレンチは安いものであれば何千円で買えるものなので、ヘルメット同様安全のための投資として1本持っておくと良いものと考えます。
なお、ハンドルを固定する時はハンドルの中心がズレないように気をつけましょう。
大概ハンドルのセンターには模様が入っていたりするので、その模様等がステムの中心を通っているか確認しましょう。
規定トルクで固定出来たら、作業は完了です。