目次
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ④ブレーキング
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ①はじめに
このブログはロードバイク初心者の方にご覧いただくことも想定していますので、先ずはボントレガーの紹介から。
ボントレガーは、米国御三家と言われるフレームメーカー「TREK」の傘下のメーカーです。70年代に創業され、90年代にTREKの傘下となって今に至ります。
ボントレガーは、今回ご紹介する「アイオロスXXX TU」をはじめとしたホイールの他、ハンドルやサドル等、様々なサイクルパーツを生産しています。
デイライトのようなセーフティ面への取組に積極的なメーカーでもあります。
数年前のさいたまクリテリウムで、全身蛍光色のウェアに、デイライトを点灯して走行していたトレック・セガフレードの選手の姿を覚えている方も多いかと思います。
TREK傘下のメーカーとして、TREKがツール・ド・フランスはじめビッグレースに機材を供給する場合、ボントレガーの製品がセットになって供給されていることが大変多いです。
プロチームに供給されている点で、製品の品質については折り紙付きと言えるでしょう。
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ②重量
重量は、公称976gです。一般的な完成者付属のホイールだと、後輪のみでこの重量を超えるものも多いです。「アルミハイエンド」と言われるキシリウムやレーシングゼロで1500g程度であり、それらと比べても2/3程度の重量です。
並み居るカーボンリムのホイールと比べても、例えば(一世代前ですが)SHIMANO 9100C24はTU仕様で公称1191gです。
このボントレガー アイオロスXXX TUと同等かそれ以上に軽いのは、ライトウェイトや、AXライトネス等極僅かなメーカーの製品のみとなります。
「飛び道具」と言えるレベルの軽さであると言えます。
持った感じとしても明らかに軽く、見た目と持った感じのギャップに苦笑してしまうほどの軽さです。
走った感じとしては、はっきり体感できるレベルで登坂力が違います。
使用しているSUPERSIXEVOにパワーメーターを装備していない為、ほかのホイール使用時との定量的な比較は出来ませんが、キシリウムプロ(クリンチャー)と比較すると雲泥の差と言っていいレベルの差があります。
ヒルクライムは如何に失速させないようにパワーを加え続けるかがキモになりますが、超軽量なこのホイールは低速からの加速に必要なPWが重いホイールに比べて明らかに少ないです。
そのため、勾配がきつくなってもそうそう失速することなく、走り続けることが可能になります。
このホイールは、ハブやスポークは汎用品であるため、恐らくホイールの外周部分にあたるリムが非常に軽量かと思われます。その点も、加速に必要なPWを減らす方向に作用していると思われます。
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ③ハブ
ハブはDT SWISSの製品を使用しています。36Tのスターラチェットを使用しているのが特徴で、「かかる」箇所が円周に36箇所あることから、標準的な18Tのハブと比べると踏み出しの空転が少ないです。
手でペダルを回してみると、確かにあそびが少ないのが分かります。
現実的に走行していてその差を感じられるかと言うと、(ヒルクライムでトルクの抜けるシチュエーションは少ないため)正直感じられませんが、少しでもパワーロスが少なくなっているのは事実でしょう。
空転させた時の音は、比較的甲高いです。ただし、同じ甲高い音でもカンパニョーロ系の乾いた高さとは違い、もっと密度の濃い、ジャー……という感じの音です(言語化するのが難しい…)。
空転させた時にどれくらい回るかについては、カンパ系のカルトベアリングには到底及びませんし、カンパの通常ベアリング比でもカンパの方が回るかなという感じです。キシリウムと同等程度かなという具合。
空転性能が実際の走行性能に及ぼす影響は大きくないとも言われますが、抵抗が少ないに越したことはないのは事実でしょうから、その点では他のホイールより劣らずとも勝るものではないと感じます。
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ④ブレーキング
アルミリムのホイールと比較してしまうと、やはり制動力は劣ります。
大昔のホイールほどヤワではないとは思いますが、カーボンリムはブレーキングを続けると熱により変形するという話も未だに散見されるのは事実であり、ブレーキングの仕方にもアルミリムより気を遣います。
ただ、全てはヒルクライムの走りの軽さの為であり、甘受すべきと思っています。実用に耐えないほど制動力が低いわけではありませんし、普段使いするホイールでは無いものとも思います。
なお、カーボンリムは特に峠のダウンヒルで大丈夫なのかと懸念される方が多いかと思いますが、大槌、そして69のコーナーを曲がる岩木山で登り下りとも使って全く問題はありませんでした。
可能な限りブレーキを引きっぱなしにせず空走でリムを冷やして意識的に短くブレーキングを済ませるような配慮はしていますが、その程度の配慮をして下ればそうそう壊れることもないのかなと思います。
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ⑤剛性
ローハイトリムに長いスポークという構成から剛性については期待していませんでしたが、少なくともMAX1000W程度の筆者であれば撓みを感じるような事はありません。
大概の人のヒルクライムでの常用PWは200~400w程度に収まるかと思いますが、この間であれば全くもって問題ないと思われます。
アタックの際など体重比10倍を超えて出る事もそれなりにあるかとは思いますが、少なくとも筆者がそのような走り方を試してみた限りではホイールにパワーを喰われているような感じは薄かったです。
もっとカッチリした、乾いた硬さのホイールは幾らでもあるとは思いますが、このホイールも柔らかいと言うほどの柔らかさではなく、必要十分な剛性と言えるかと思います。
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ⑥空力性能
「アイオロス」という名前はギリシャ神話の風神に由来するものですが、流石にリムハイト20mm強でプレーンスポークのこのホイールに、空力性能の高さを求めるものではありません。
このホイールをあえて平地メインの用途に使う人も少ないかと思いますが、平地〜緩斜面ではアドバンテージを取れるホイールではありません。
ヒルクライムレースでもコースの中に平坦や下りが含まれるようなレイアウトは珍しくありませんが、そのようなシチュエーションでは一時的にビハインドを背負う可能性も考慮して、立ち回りを考えたほうがよいと言えるかと思います。
ボントレガー アイオロスXXX TUのインプレ⑦まとめ
肝心のお値段を記載し忘れていましたが、定価で31万円強です。
この重量にしては比較的、お手頃なお値段と言えるかと思います。
ただ、冒頭記載のとおり既に廃盤のため、現在このホイールを入手するためには中古を購入する必要があります。
筆者は、このホイールを10万円アンダーで購入しました。
多少デカールが剥がれかけていたりするなど使用感はそれなりですが、自分で使用していても遅かれ早かれそれなりの使用感は出てくるためあまり気にせず購入しました。
皆様ディスクブレーキにお乗り換えされるためか、リムブレーキの中古機材は比較的数が出回っています。
中古とはいえ今であればまだ年式も比較的新しく、円安等の影響で数年前に比べて多くの製品が高騰しているなか、中古リムブレーキ機材のお得感は高いなと感じます。
今回紹介したボントレガー アイオロスXXX TUも中古品が比較的安価で流通しているのを複数件見かけました。
ヒルクライム決戦用リムブレーキバイクを組みたいとお考えの方には、積極的におすすめできるホイールだと思います。ぜひ、ご興味をお持ちいただけましたら中古市場を探していただければと思います。