目次
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?②アルミフレームの良さ
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?③アルミフレームのデメリット
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?④カーボンフレームの良さ
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?⑤カーボンフレームのデメリット
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?①はじめに
このブログは初心者の方にご覧いただくことも想定しておりますので、まずはロードバイクに使われる素材を解説いたします。
既にロードバイクはじめスポーツバイクに乗られている方は、読み飛ばしてくださいませ。
ロードバイクに使われる素材は、主として「カーボン」「アルミ」「クロモリ」の3つが挙げられます。
ピナレロの古いドグマのようにマグネシウムを使ったフレームや、デローザやジオス、パナソニックなどのラインナップにあるようなチタンなどの素材もありますが、多くのメーカーが生産しているのはこの3種類の素材です。
ロードバイクの素材①クロモリ
歴史的な流れをみれば、ロードバイクは、ロードレーサーと呼ぶのが一般的だった長きにわたり、クロモリを主な素材としてきました。
クロモリは、簡潔に言えば「鉄」です。90年代ごろまではレースの世界でも一般的な素材でしたが、現在は同等以上の剛性を得ながらより軽量に作れるカーボンやアルミがメインとなりました。
しかし、クロモリならではのスタイリング、アルミや今どきのモノコックカーボンには見られない細身のチューブやラグが織りなす造形美には未だに多くのファンがいます。
また、筆者はクロモリに乗ったことは無いのですが、よく言われるのは「バネ感のある独特の乗り心地がある」という言葉です。
ロングライドなどをメインにしている方で、乗り心地を重視する方が積極的にクロモリのロードバイクを選ぶ場合もあります。
さらに、カーボンやアルミと比べて、錆びを考えなければ頑丈です。エンド部などが曲がっても、曲げ直しが可能です。
フレームのフルオーダーが可能なのも、クロモリの唯一無二な点です。
カーボンフレームやアルミフレームでは基本的に既製品を購入するほかありませんが、クロモリフレームは一部のメーカーや、ビルダーの工房に依頼すれば、ジオメトリやパイプを自分の好みで選択できます。
ワンオフの、自分だけに合った自分だけの自転車を得られるのは、クロモリならではと言って良いでしょう。
The Colnago Master is the evergreen of the cycling history. Released in five different versions from 1982, it is still an icon. #colnago #labicicletta pic.twitter.com/U3zauEKzQO
— Colnago (@Colnagoworld) 2021年3月9日
ロードバイクの素材②アルミ
クロモリに代わるものとして、90年代から2000年代前半にかけて主流を占めたのが、アルミフレームです。
性能の細かい話は次項以降に譲りますが、クロモリと同等の剛性を確保しながらより軽量なフレームを作れることから、レースの世界では一時期メインの素材となりました。
筆者視点でパッと思いつく著名な例としては、
- バネストが駆ったピナレロ・ケラルライト
- メルカトーネ=ウノが駆ったビアンキ・メガプロ ※スカンジウム配合
- フェスティナが駆ったスペシャライズド・S-WORKS SL
- ドイツテレコムが駆ったピナレロ・パリ
など。主流であった時代は短かったものの、アルミがメインストリームを占めた時代が確かに存在しました。
ただし、より重量剛性比に優れ、振動吸収性が勝るカーボンフレームの台頭により、第一線を退いてゆきました。
ロードバイクの素材③カーボン
現在のメイン素材が、カーボンです。
レースの世界に出てきたのは意外と早く、80年代にはTVT(現在のルック、タイムの前身)社製のカーボンフレームで、ベルナール・イノーやグレッグ・レモンがツールドフランスで優勝しています。
しかし、本格的にメインとなったのは90年代後半以降。出始めはランス・アームストロングがTDFで優勝したTREKの5200あたりからです。
その後、2000年代前半頃まではアルミとカーボンが併存していましたが、2000年代後半からはほぼカーボンフレームのみとなりました。
スキル・シマノなどは別府選手がTDFに出た2009年時点でもKOGAのスカンジウムフレーム(正確には、アルミにスカンジウムを配合したもの)を駆っていましたが、2020年代に至った現在では、トップクラスのレースに出てくるのはカーボンフレームのみです。
カーボンフレームについても細かい性能の話は次項以降に譲りますが、アルミよりもさらに重量剛性比に優れ、形状の自由度が高いことや素材特性から振動吸収性もアルミより高くしやすいことが特徴です。
軽量さ、振動吸収性、そして剛性が重視されるレースの世界ではうってつけの素材であり、現在メインとして使われる所以となっています。
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?②アルミフレームの良さ
アルミフレームとひとくちに言っても、様々な素材があります。
クロスバイクや比較的廉価なアルミフレームだと、6061アルミという素材が多いです。筆者も現在手元にあるロードバイクは6061T6です。
アルミフレームの代表のように語られるキャノンデールについて言えば、アルミハイエンドという位置づけのCAAD13は6069アルミを用いています。
6000番台アルミより強度が高い7000番台のアルミを使用しているフレームもあります。
余談ながら、戦時中に「超々ジュラルミン」と呼ばれ、有名な零戦に使われていたのもこの7000番台アルミです。
ロードバイクでよく見かけるのは、7005アルミというもの。魔改造派のカスタムベースとして名高いTNI7005MK2(最近MK3にモデルチェンジしたようですが…)などが挙げられます。
ロードバイクのアルミフレームの良さ①独特の踏み味
筆者は6000番台にも7000番台にも乗ったことがありますが、共通する良さを挙げるなら「驀進するような推進力」が挙げられます。
カーボンフレームが柔らかいというわけではないですが、軽さと乾いたような踏み味からスパーンと進むような感のあるカーボンフレームに対して、アルミフレームは重々しさをもった力強い加速をします。
剛性の感じ方に違いはあるものの、アルミフレームのロードバイクも塊感をもってしっかりと進みます。
カーボンフレームとは乗り味が違っていて、これは優劣ではなく、個人的にはアルミならではだと思っています。
乗りたくなることもあって、あえてアルミフレームをチョイスしてサイクリングに出かける機会もそれなりにあります。
△アルミフレームもトルクをかければしっかり、ロスなく進みます。
ロードバイクのアルミフレームの良さ②ブレーキング、コーナリングの安定感
メインで使っているGIOS AEROLITEはもちろん、UCI規定アンダーのSUPERSIXEVOも、乗り慣れた筆者にとっては気持ちよく減速し、気持ちよく曲がるバイクです。
しかし、GIOSに乗った最初の頃は、その時点でロードバイク歴は4年を超えていましたが、それでも怖さを感じました。
ロードバイクは車体より乗員が断然重く、ただでさえ高重心な乗り物です。
アルミフレームの場合は(フレームそのものの重量差はせいぜい数百gですが、大概組む部品がエントリーグレードからミドルグレードなこともあって)カーボンフレームよりは比較的低重心なことが多いです。
このため、初心者の方なども安心してブレーキング、コーナリングをこなせます。
フレームそのもののブレーキング、コーナリング性能については、下側が大口径となった上下異径のヘッドチューブを採用していれば、フレームそのものではアルミでも大概のカーボンフレームと遜色無いかと思います。
クリテリウム等コーナリングの多いレースを走る場合でも、何ら気後れする必要はないといえるでしょう。
△ブレーキングにフォークが負けることもありません。
ロードバイクのアルミフレームの良さ③整備性
これはメーカーなどにもよりますが、ほぼプレスフィットBBでワイヤー内装式がほとんどを占めるカーボンフレームに対し、アルミフレームはスレッドBBや外装式ワイヤーの車体が未だに存在しています。
汎用工具で整備が簡単に出来、様々な機材を試しやすいのはアルミフレームの良い点だと言えるかと思います。
ポジショニングや機材チョイスへの理解を深めることで、速く走るきっかけをつかむことに繋がることもあります。
△スレッドBBの整備性はやはり便利です。
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?③アルミフレームのデメリット
アルミフレームのデメリット①振動吸収性は微妙
不快感を感じるほど悪くはないですが、振動を軟質に変換してくれるような感があるカーボンフレームと比べると、硬質な振動が多いのは現実だと思います。
振動吸収性は速さには直結しないようで、跳ね上がっている間はペダルを踏めなくなるため、速さに直結するといえます。けして軽視すべきでないファクターです。
関東圏の比較的路面のきれいな道路を走っているぶんにはそれほど問題となりませんが、筆者が在住している東北などでは荒れた路面が多く、かなり大きな問題です。
ただし、チューブレスタイヤの使用などで、いかようにも改善できるかとは思います。
△カーボンフレームは、素材特性と形状の自由度の高さから、アルミフレームより振動吸収性が高いことが多いです。
アルミフレームのデメリット②重量の超えられない壁
アルミはフレーム1000gあたりが下限です。
600g台、突き詰めたものだとそれ以下に絞り込めるようなカーボンフレームと比較すると、重量には超えられない壁があります。
ただし、「同じパーツで組んだ場合は」という但し書きに注意する必要があります。
割と見落とされがちだと感じますが、1000gのアルミフレームをデュラエースで組み、700gのカーボンフレームをアルテグラで組んだ場合、コンポーネント以外の部品が全て一緒であればほぼ同重量になるかと思います。
お値段については、大概前者のほうが安く上がるのではないでしょうか。
そのような観点で考えると、現実的に予算の制約がある場合は、アルミフレームにハイグレードのコンポーネントや各種部品を組み込むというのも選択肢として有りだと思います。
予算に糸目をつけない場合は、カーボンフレームを使用したほうが軽量です。
フレームのみではボトル一本分の差にもならず、よほど僅差の実力差でない限りそれで明暗が分かれることは少ないかと思いますが、他の条件が一緒であれば軽量な方が速いのは事実です。
△登りは重量差がダイレクトに響きます。
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?④カーボンフレームのメリット
ロードバイクのカーボンフレームのメリット①軽量、高剛性、高振動吸収
廉価なカーボンフレームと高級アルミフレームの比較等例外もありますが、大概の場合にあてはまるメリットとしてひとことでいえば「重量剛性比と振動吸収性が高い」となります。
ほとんどのカーボンフレームはほとんどのアルミフレームより多少といえど軽く、そして一般に振動吸収性が高いです。
さらに、アルミフレームと踏んだ感じは違うものの、同等の剛性を持っています。
これらの面はレースに求められる性能そのもので、コストを考えなければこれらの面ではカーボンフレームはアルミフレームの上位互換であることがほとんどな為、現在のレースシーンではほぼカーボンフレームのみとなっている訳です。
…カーボンフレームのメリットは、ほぼこの1項目に言い尽くされます。
重量が軽量になる利点として「輪行が楽」等もありますが、フレーム単体重量の差でそれほど変わるかといえばそんなことは無いです。
ひとつ挙げるなら、以下があると思います。
ロードバイクのカーボンフレームのメリット②言い訳を許さない
機材スポーツの沼ですが、「機材が〇〇だから負けた」という定番の言い訳があります。
現実に、フレーム単体の差では僅差であっても、コンポーネント、ホイール等のグレード差が重なるとkg単位の差となり、明確な差が出ます。
このため、「機材が〇〇だから負けた」というのは現実にあり得る話です。
負けた後にこのように言うのではなくとも、レースに臨む際に周囲がカーボンフレームばかりのなか、自分がアルミフレームという状況に陥る場合が多々あります。
このような状況下で精神衛生上気後れしないでいられるかといえば、少なくとも筆者はアルミフレームをメインで使用していた頃は多少なりとも気後れしていました。
文句のつけようがない機材を使ったほうが言い訳もできないため、負けるにせよ納得して負けることができ、自分自身が精進するのを妨げないのは、カーボンフレームを使うメリットと言えるかと思います。
ロードバイク、アルミとカーボンは変わらない?⑤カーボンフレームのデメリット
ロードバイクのカーボンフレームのデメリット①取り扱いには注意を要する
アルミフレームのロードバイクは、いい意味で気楽に扱えます。交通事故クラスの衝撃を与えれば流石に壊れますが、倒したりしてしまっても致命傷になることは少ないです。
カーボンフレームも、鋭利なものに直撃したような場合でなければ倒したりしてもただちに致命傷になるかと言われればそのようなことは少ないかと思いますが、立てかけ方などひとつとってもアルミフレームよりは気を使います。
ロードバイクのカーボンフレームのデメリット②整備性が悪い場合も多い
独自規格のBBや内装ワイヤーなどを採用している場合が多く、一般にアルミフレームよりメンテナンスの難易度は高いです。
筆者も大概のメンテナンスは自分で行いますが、BB30Aのクランク交換などは工具を持っていないためお手上げです。工具を購入すればできるかとは思いますが、使用頻度とお値段を考えると割に合いません。
プロショップが多い東京などであれば良いでしょうが、地方などでプロショップが周りにない場合だと、自分でメンテナンスできなければ不調を起こした際はしばらく乗れなくなってしまう場合もあります。
△BB30Aは筆者もお店に依頼して扱っています…。
ロードバイクのカーボンフレームのデメリット③コスト対効果は指数関数的に悪化する
これがこの記事の結論ですが、走行性能だけにフォーカスすればアルミフレームとカーボンフレームにたしかに差はあるものの、乗り手の実力を大幅にひっくり返すような差はフレーム単体ではありません。
一方で、これはどのようなものでもそうですが、コストを増加させていった場合、性能の上がり幅はどんどん小さくなってゆきます。
アルミフレームとカーボンフレームの差額、数十万円で得られるのは、振動吸収性の向上の他は数百gの軽量化…このくらいです。
一方で、例えば、鉄下駄ホイールからレーシングゼロなどに変えると、走りは激変します。
エントリーモデルのタイヤからハイエンドのタイヤに変えることでも、走りは激変します。
大概の場合予算は限られているかと思いますので、自分の自転車を速くしたいのであれば、フレームだけに囚われるのではなく、コストパフォーマンスのよい改造がなにか?をよく考えると良いです(まったくもって人のことは言えないのですが)。
そのうえで、他の部分よりフレームを改善したほうが性能の上がり幅が大きいと判断されるのであれば、カーボンフレームの導入を検討するとよろしいかと思います。