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…グランペール…

「完璧」を求めすぎないこと。

何か新しいことを始めるとき、あるいは目標に向かって邁進するとき、私たちはつい「完璧」を目指してしまいがちであるものと感じます。

今日から毎日欠かさずやる、徹底的に食事を管理する、仕事のクオリティを極限まで高める、といった意気込みは素晴らしいものですが、筆者の経験上、最初からアクセルを全開にしすぎると、どこかで歪みが生じることが多いように感じます。

今回は、筆者が趣味のロードバイクを通じて行ってしまった失敗と、そこから得られた「80%で頑張ることの重要性」について、書きたいと思います。

ストイックすぎた2021年

少し前のこととなりますが、2021年。当時、筆者はヒルクライムに本気で取り組んでいました。

「速くなりたい」という純粋な動機のもと、トレーニングはもちろんのこと、徹底的なカロリー管理を行っていました。

身長186cmで58kg台まで削る

言わずもがなですが、ロードバイク、特にヒルクライムにおいて「軽さは正義」です。パワーウェイトレシオを高めるため、筆者は減量にのめり込みました。

摂取カロリーを記録して超過摂取を行わないように徹底し、かつ、乗り込みました。その結果、練習直後の計測では58kg台に突入するまでになりました(筆者の身長は186cmなので、BMI16.7くらい。)。

筆者の行きつけの練習コースである上品山のヒルクライムにおいて、過去一番速いタイムを記録したのは、この年でした。かの有名なSITさんに30秒差くらいで獲られてしまいましたが、一時期はコースのKOMも持っていました。

制御不能になった食欲と、過食

しかし、無理な歪みは、冬場になって現れました。

きっかけは、12月はじめの多少のカロリー摂取過多でした。普通の感覚であれば、「まあ、冬だし多少は太ってもいいか」で済む話だと思うのですが、当時の筆者は「完璧」であることに囚われていました。

昨日食べすぎた分を今日取り返さなければならない、と考えた筆者は、ゼロキロカロリーのゼリーを活用するなどして、一日の摂取カロリーを1000kcal未満に抑えるような極端な調整を行いました。

しかし、その反動でまた少し食べすぎてしまい、また極端な調整を行う、ということを12月なかばにかけて何度か繰り返しました。

コンビニのお菓子を一度に何種も買いすべて食べ、中華料理屋とラーメン屋をハシゴする

飢餓状態に陥った脳は本能で身体を守るようになってしまうようで、12月の末頃、筆者は過食症のような状態に陥ってしまいました。

コンビニに入っては、お菓子を何種類もカゴに入れ、それを片っ端から全て食べてしまうような状態に。満腹感があっても、気持ち悪くなっても食べ続け、吐いてしまうようなことを繰り返しました。

中華料理屋で定食をしっかりと食べた直後、その足で仙台っ子ラーメンに向かい、大盛りを注文して食べてしまったこともありました。この日の摂取カロリーをあとから概算してみると、一日で7000kcal以上を摂取していました。

「食べたい」という衝動が止まらず、食欲を自分自身でコントロールできないうえ、食べてしまった後は自己嫌悪に襲われました。

「なんとかしなければ」と思って翌日は節制に走り、その反動でまた過食する、という負のループから抜け出せなくなっていました。

80%で「イーブン」に続けること

そんな日々がしばらく続きましたが、結局、無理に取り返すのはやめようと思うこととして、3月頃になってようやくこの負の連鎖を断ち切ることができました。

その当時心がけていたことは、以下の2点。

  1. 3食を極力丁寧に食べる(抜かない)。
  2. 1食食べすぎてしまった場合も、次の食事を抜くような調整をせず、極力イーブンに食べ続ける。

「昨日の夜、あんなに食べたんだから朝は抜き」ではなく、朝も普通に食べる。昼も食べる。そうすることで血糖値の乱高下を防ぎ、脳に「飢餓状態ではない」と認識させることに努めました。

練習自体は欠かさず続けていたので爆食しても体重は爆増まではしませんでしたが、年が明け、2月下旬になる頃には体重は63kgを超えていました。

しかし、そのあたりで食欲の暴走は落ち着き、それ以降過食をするようなことはほぼなくなりました。

教訓としては、ありきたりな言葉ですが「やりすぎはよくない」という感が強く残っています。

一点特化だけが正解ではない

昨年、2025年シーズンは、筆者の体重は60〜61kg程度で安定していました。2021年比では2〜3kg重い状態です。

上品山のタイムは全開で走ってもベストに少しだけ及ばずで、登り一本勝負であれば2021年のほうが速かったかなと思います。

しかし、平地や緩斜面において、以前とは比べ物にならないほど強く走れるようになりました。

総体で見れば間違いなく2025年の筆者のほうが速く、そして強く走れていました。現に、ヒルクライムレースでも複数回、年代別優勝を取ることができました。

一点特化で身を削りすぎずとも、やり方によって同等かそれ以上の結果は出せる、ということが、今の筆者の認識です。

80%程度のゆとりを持った状態であった方が、結果としてトータルのパフォーマンスが高くなることもあるものと感じています。

「80%」でいい

自転車に限らず、これは仕事や日常生活においても全く同じことが言えると考えています。

責任感の強い人、真面目な人ほど、自分に100点満点を求めがちなように思います。すべてのメールに即レスしなければ、とか、資料は完璧に作り込まなければ、とか、家事も育児も手を抜いてはいけない、など…。

しかし、そうやって100%で張り詰めた糸は、ふとした瞬間に切れてしまうと上記の実体験から思います。

そして、一度切れてしまうと、復旧には長い時間がかかります。そのようにならないよう、常に80%くらいの出力で、淡々と、しかし確実に続けることが大事なのではないかな、と思っています。

おわりに

かつての筆者のように、今まさに「100%でなければ意味がない」「自分を極限まで追い込みたい」と考えている方がいらっしゃるかもしれません。

特にヒルクライムは、才能の天禀に依る部分が少なく、努力すれば努力するだけ速くなる競技なので、そのような思いを持つ方も多いものと思います。

その思いは素晴らしい、美しいものです。

ですが、「余裕を持つことは、長く走り続けるために大事」ということを心の何処かに置いておければ、少なくともかつての筆者のようにはならなくて済むのかなと思います。

筆者は幸運にして負の連鎖を脱して、戻って来ることができました。

しかし、バーンアウトして以降ぱったりやめてしまったような方もそれなりにお伺いするところではあって、やりすぎてしまうとどこかで折れてしまうかもしれません。

過ぎたるはなお及ばざるが如し、という故事を心の片隅において、自転車はもちろん、その他のことにも取り組んでいければいいのかな、と思っています。

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