目次
はじめに
突然ですが筆者、少し前にお付き合いしていた方と結婚しました。
結婚して、諸事少し落ち着いてきた頃、ようやく新婚旅行の検討をはじめました。
新婚旅行の候補は色々と出てきたのですが、最終的に「サイクリストの聖地」こと「しまなみ海道」をメインに旅することにしました。
潮風のまち、尾道
旅のはじまり…尾道駅~本通り商店街・絵のまち通り
仙台から遥々、東北新幹線と東海道新幹線、在来線を乗り継いで、日本列島を西へと駆けること6時間ほど。広島県は尾道(おのみち)に到着しました。
電車を降りると、潮風が身体を包みます。尾道は瀬戸内海に面した、海のまちです。
駅舎を出て、東へ歩きだしました。少し歩くと、「本通り商店街」に至ります。
昔からあるのであろう、昭和の残り香を強く感じさせるレトロな商店街ですが、一部のテナントは近年新たに入ったようなお店です。
地方の商店街は概してテナントが減る一方のことが多い印象がありますが、ここ尾道の本通り商店街はそのような寂れた印象を感じさせない、歩いていて楽しい商店街でした。
商店街の歴史が分かる資料を展示した施設を見学したり、ジェラートを買って食べたり、横道に逸れたりしながら、楽しんで歩きました。
千光寺山
商店街を抜けて、目的の地・千光寺山へ到着しました。千光寺山にそびえる千光寺は、真言宗系の寺院で、806年に創建された、1200年以上の歴史を持つ寺院です。
この千光寺、ロープウェイで登ることができます。
ロープウェイ、筆者は高所恐怖症なのもあって多少怖かったですが、高度を増していくに従って小さくなっていく尾道の街並みと、瀬戸内の海と島が織り成す景観は絶景そのものでした。
頂上には展望台があって、そこで景色を堪能することができます。
景観を堪能したあとは、歩いて降ることにしました。岩肌が露出する急峻な、所々から瀬戸内の絶景を臨める、そして随所からこの古刹の歴史を感じられる小路をくだって、尾道の街なかに戻りました。
宿泊はONOMICHI U2
尾道の駅の方へ歩いて戻り、駅前を過ぎてもう少し進むと、本日の宿「ONOMICHI U2」が見えてきます。ONOMICHI U2は、1943年築造の「県営上屋2号倉庫」をリノベーションして造られた施設です。
入ると早速GIANTストアがあります。そして、その奥にレストランがあり、さらにその奥に宿泊施設があります。
奥の宿泊施設は「HOTEL CYCLE」という名称のとおり、サイクリストのことを考えたつくりです。車体をそのまま持ち込めるのは当然として、ドロップハンドルを逆付けした自転車用ハンガーが壁に備え付けられています。また、サイクルラックが屋内に置かれていたりします。輪行が大分長くなる都合上、今回は自転車を持ち込みませんでしたが…。
内装はとても綺麗でした。1943年築ということで建物自体は80年以上の歴史があるはずですが、全く感じさせません。高級感のある造りでした。
また、ズイフトを使えるダイレクトドライブのローラーがセットされたロードバイクが2台、さらにキッカーバイクが1台あり、来館者がズイフトを楽しめるようになっていました。無料区間が終わってしまっておりすぐにログイン出来ないようなハプニングもありましたが丁寧に対応していただき、妻と2人でズイフトを楽しめました。
夕食は、隣の建物にあった洋食レストランの「WHARF」さんで。パスタと、揚げ物をいただきました。どれもとても美味しかったです。
夜の海辺を歩いてONOMICHI U2に戻り、一泊。
翌日は、朝食の前に宿のまわりを散策してみました。
こちらは上屋3号倉庫。建造はほぼ同年代のようですが、こちらの倉庫はまだ現役のようでした。それにしても、1943年といえば太平洋戦争の只中のはずで、資材などにも恐らく制約があったであろう中で建造されたと思われるこの倉庫が未だに現役なのはすごいことだなと感じました。
歩いていくと、お洒落な消防署なども。前衛的な外観からなんの施設だろう?と思いましたが、近づくと消防署で驚きました。近年、官公庁も随分お洒落な庁舎が増えているなと感じます。
レンタサイクルを借り受ける手続きのみ済ませたうえでONOMICHI U2に戻って、併設のレストランで朝食をいただきました。ビュッフェ形式で、パン、サラダ、ヨーグルトなどをいただきました。地場のフルーツ(はっさく、いちじく、みかん)を使ったジャムが用意されていたりするなど、瀬戸内の味を楽しめる一食でした。
食事を終えて、ようやく出立です。レンタサイクルにまたがって、走り出しました。
向島〜高見山ヒルクライム〜
レンタサイクルはGIANT ESCAPE R3
レンタサイクルとして借り受けたのは、GIANTの定番クロスバイク「エスケープR3」でした。筆者にとっては(ドロップハンドルに改造しており、原型をとどめていませんが)愛車の1台であり、よく知った車体です。
別段自転車を趣味にしているような人でなくともとっつきやすい1台であるのは間違いなく、レンタサイクルとしては良いチョイスだなと思いました。なお、フレームサイズは様々に用意されていました。筆者はMサイズ、妻はSサイズを借り受けました。
全くの余談ながら、筆者は黄色のエスケープR3に乗っていますが、本来赤のエスケープR3が欲しかったところ、学生時代の懐具合から、型落ち特価で6,000円安かった黄色を選んだ経緯があります。
今回借り受けたレンタサイクルは赤で、経緯を思えば、9年越しに乗りたかった赤色のエスケープR3に乗ることができたことになります。赤色のエスケープR3にまたがって、購入当初のそんな思い出をふわっと思い出しました。
渡船で向島へ
尾道から向島へは、橋をわたってゆくことも可能ですが、橋の交通量の多さ等から推奨されていません。渡船があり、そちらを使うのがおすすめ…とされていたので、素直に渡船を使いました。
筆者のようなサイクリストだけではなく、通学と思しき学生も乗船していたりし、地域交通の足として重要な役割を担っていることが伺えました。運賃も格安(100円…!)で、とても便利でした。
高見山ヒルクライム
事前の下調べで、向島の「高見山」というところが絶景であることを掴んでいたので、登ることに。大分激坂があったうえ、リュックを背負っての走行であったため、特にヒルクライムに慣れていない妻はかなり苦戦していました。
初心者であった妻には「力を抜いて登る」というのが難しかったようで、頑張って登ってあっという間に力を使い切ってしまうようなことを何度か繰り返してしまっていました。難儀したものの、クロスバイク故の低いギア比(インナーローでF28T-R32T)にも助けられて、何とか登頂。
登った先はとてもよい景色でした。
そして、島の平地部にはそれなりに多かったサイクリストは、筆者たちを除き、誰一人上がってきません。
ヒルクライムが好き、という方はそもそもそれほど多くないでしょうし、皆「しまなみ海道」を走りたいのであって「しまなみ山道」を走りたくて来たわけではないのでしょうから、当然と言えば当然のようにも思いますが、そんな方々に勿体ないなと感じてしまうようないい景色でした。もし足に余裕があれば、ぜひ立ち寄ることをおすすめします。
因島〜水軍城とスカイライン〜
トラブル!
高見山をくだり、海沿いを走ること、しばらく。
因島大橋を渡って因島に向かう途中、妻の自転車にトラブルが発生。何と、シフトワイヤーがアウター受け付近で断絶してしまいました。
恐らく、経年劣化によるものと思われます。潮風を浴びる立地であり、ワイヤーの劣化も早いのでしょう。これにより、リアの変速が不可能になってしまい、走行自体は可能なものの、スムーズな走行は難しくなってしまいました。
その場でレンタサイクルの運営に連絡すると、すぐに変えの車体をトラックで運んできてくれました。とてもスムーズな対応で、大変助かりました。
因島大橋の上では(自転車の走行レーンと自動車の走行レーンが別れており)引き渡しができないため、橋を渡った先の公園で待ち合わせを提案されました。
橋を渡った先の公園には、大きな恐竜の像が。居合わせた方に妻と筆者と恐竜の3ショットを撮っていただきました。公園にはカフェがあったため、コーヒーを飲んだりして待ちました。
それほど待つこともなく、レンタサイクルの業者さんが到着。ワイヤーが切れてしまった車体を返却し、代わりのエスケープR3を受け取って、旅を再開しました。
因島水軍城
因島では、「因島水軍城」を訪れました。因島水軍城は、村上海賊の資料館的位置づけの施設です。
昔からの城郭ではなく後世における建造とのことではありますが、険しい山の中にそびえる天守閣は壮観であり、城門の周りなどに丸に上の紋を入れた盾が置かれている等、雰囲気がとてもよい施設でした。
なお、入口部分だけはそれなりの勾配でしたが、平地から大きく登ることはないので、そこだけを割り切って押し歩きするなどすれば、サイクリング初心者の方でも来訪に苦労することは無いのではないかと思います。
青い空と海の、因島水軍スカイライン
因島水軍城を訪れたあとは、しまなみ海道の本道からは少し回り道をして、因島水軍スカイラインを走ることにしました。因島水軍スカイラインは、それなりのアップダウンがある9km程度の行程です。
海と島、そして青い空が織りなす光景は絶景のひとこと。「スカイライン」と名付けられた理由にも納得のいく景観です。
普段から自転車に乗っているような人にとっては何でもない道だと思いますが、プチ峠といってもいいのではないかと思えるような登りもあり、サイクリングを趣味にしているような人でないと多少苦労するかもしれません(妻はだいぶ苦労していました)が、その苦労の甲斐ある景色を楽しめる道です。
「カフェ 菜のはな」でランチ
因島水軍スカイラインを抜けて、生口島(いくちしま)にわたる手前で、お昼時になったので、「カフェ 菜のはな」で昼食をとることにしました。
きのこあんかけが載った鶏肉をメインとするランチ、そしてデザートにケーキも頂きました。たくさん使った体に沁みる、とても美味しいお昼でした。
お昼を食べた後は、生口島と因島をつなぐ生口橋へ。しまなみ海道の橋は、自転車の通行を考えたつくりになっており、自転車でも渡りやすいです。
生口橋をわたると、今日の目的地、生口島です。
生口島〜ビーチを楽しみ、お宿の手料理を満喫〜
瀬戸田サンセットビーチへ
この日の宿泊先は、生口島に確保していました。しかし、生口島についた時点で昼過ぎであり、まだ時間があったため、少し回り道をすることに。
宿は生口島の南側だったのですが、北側を沿岸沿いにぐるっと走ってみることにしました。
しまなみ海道は全体を通じて自転車通行帯が引かれており、都市部に比べれば比較的信号が少ないうえ、(筆者たちが訪れた高見山や因島水軍スカイラインを通らない)しまなみ海道の本道はアップダウンもそれほど多くないため、快走できます。
大分いいペースで潮風を浴びながら走り、南国のような木(語彙力)が並び立つ道を走り抜けたさきで訪れたのは「瀬戸田サンセットビーチ」でした。
透き通るような海と青い空で、最高のビーチでした。水着を持ち合わせていませんでしたが、靴を脱いで海にも入ってみました。6月の海はまだ冷たさがありましたが、外気温があたたかだったため、とても気持ちよかったです。
「ちいさなお宿 輪空(LINK)」さんへ
サンセットビーチを満喫したあとは、そのまま生口島の外周を反時計回りに走り、本日の宿泊地「ちいさなお宿 輪空」さんへ。
民家を改装したかのような、冠している名前のとおり小さなお宿ですが、切り盛りされている御夫婦がとてもホスピタリティ溢れる方で、素晴らしい時間を過ごすことができました。
「サイクリストの宿」を掲げており、サイクリストにとてもフレンドリーなお宿です。
御主人は自転車に乗られるとのことで、宿の壁にはとても美しい、コルナゴのC64が。ちょっとポタリング、などではなく、大分本格的に乗られているようです。奥様も自転車にはとても詳しい方でした。
宿の壁には御主人が参加した際のものと思われる大会のゼッケン等が沢山貼られており、サイクルスポーツなどの雑誌も自由に読むことができました。
お夕飯は、つい数時間前にいけすからあげたばかりというお魚を使った煮付けをはじめ、とても美味しい数々の品々をいただきました。広島県産レモンを使用した「檸檬エール」で乾杯。疲れた身体が癒やされる、とても美味しいお夕飯でした。
就寝し、翌朝。朝陽がきれいに見える、という奥様のお話を聞いていたため、少し頑張って早起きし、宿の窓から朝陽を眺めました。
美しい日の出の瞬間を、しっかりと観ることができました。
日の出を眺めた後は、少し海辺の堤防を散歩。朝の潮風は少し寒かったですが、とても気持ちよかったです。妻と2人で貝殻を拾って、お土産にしました。
沁み渡るモーニングコーヒー、そして心尽くしの美味しい朝食をいただき、あっという間に出発の時間に。今治へ向けて、出発です。
大三島&伯方島〜「サイクリストの聖地」と、島一周〜
「サイクリストの聖地」
お宿を出て、生口島と大三島をつなぐ多々羅大橋へと向かいます。多々羅大橋をわたるとそこは、大三島です。
大三島に入ってすぐ、しまなみ海道を象徴する「サイクリストの聖地」が。かつて他の方のブログやSNSで幾度となく見たこのモニュメントの前に、ようやく筆者も立つことができました。
伯方島(はかたしま)一周
妻とは、どこかの島を一周してみたいね…と話していました。しかし、島といえど外周は何十kmかあるため、回れそうな島を選ぶ必要がありました。
「サイクリストの聖地」があった大三島も候補に上がりかけましたが、外周が40kmはありそうで、今治までの体力と時間を考えると流石に黄色信号が灯るため、別の島とし、大三島は素直にしまなみ海道に沿って走り通過することに。次の伯方島を一周することにしました。
大三島大橋を渡って伯方島に入って直後、しまなみ海道の本道を逸れて伯方島環状線へ。島の外周を、時計回りに進みはじめました。
なお、伯方島の伯方は、かの有名な「伯方の塩」の伯方です。かつて伯方塩田と呼ばれる塩田があったものの、時代の流れのなかで廃止となってしまい、その存続運動に端を発して製塩事業が興った…という成り行きのようです。詳しくは伯方塩業さんのHPに譲ります。
多少のアップダウンはありましたが、海と島の織りなす景色を楽しみながら、快走しました。途中で多少道に迷ったりするハプニングもありましたが、無事一周を遂げました。
一周後は、「マリンオアシスはかた」でアイスを食べてひと休憩。折しも気温も上がってきて、アイスがとても美味しく感じられました。
休憩を終えて、いよいよ最後の島「大島」へ向かいます。
大島〜一生忘れられないであろう絶景・亀老山展望台〜
橋を渡り、大島へ。そのまましまなみ海道沿いにしばらく走り、途中で道を逸れ、「亀老山」に向かいました。
ここまでで妻は結構疲労していたため、筆者が妻のリュックも背負って登ることに。
初っ端からかなりの激坂のお出迎えでしたが、クロスバイクゆえギア比が低いのにも助けられ、焦らず登りました。
筆者の方はリュックを2つ背負った状態であり、普段からヒルクライムを楽しんでいる筆者であっても流石に登りづらく感じましたが、二人で少しずつ登っていきました。
途中には、「あと◯km」の看板が何箇所か設置されていました。看板には、登りきった先にはジェラートが待っている旨の記載が。登りきった後の楽しみとして、頑張って登りました。
40分くらいはかかったかと思いますが、なんとか無事登頂。ご褒美のジェラートは温まった身体に沁みて、とても美味しかったです。
展望台に登ると、これ以上ないほどの絶景。来島海峡大橋、そしてそのさきの四国の緑の大地と、瀬戸内の島々、青い空と海が織りなす絶景が、出迎えてくれました。
旅の終わり〜今治へ〜
来島海峡大橋へ
亀老山を下り、道の駅よしうみいきいき館で補給。ハンバーガーをいただきました。
ヒルクライムで使ったぶん、エネルギーをしっかり補給しました。
補給後は、さきほど亀老山から見下ろした来島海峡大橋へ。来島海峡大橋は総延長4.1kmというとても長い橋です。仙台で言えば仙台駅から長町駅の間の距離より長いといえば、その大きさがイメージできるかと思います。
自転車で走りましたが、走っても走っても橋という感じでした。
なお、今回は立ち寄りませんでしたが、橋の途中にはいくつか無人島があり、それらの島に降り立つこともできるようです。
四国上陸:ゴールの地・今治へ…
来島海峡大橋をわたるとそこは、四国です。妻にとっても、筆者にとっても、人生初の四国でした。10kmほど走り、無事今治駅前のゴール地点に到着し、自転車旅は終わりました。
その日の夜は、今治市内のホテルに泊まりました。
お夕飯は鯛尽くし。来島海峡は鯛が名産であり、地元で穫れた鯛を楽しめるメニューでした。
鯛のおかしらなど、初めて食べる料理もありましたが、どれもとても美味しく楽しめました。
今治にはお城もあります。夜はライトアップされており、とても美しかったです。
その後の旅
自転車旅はここまでですが、京都を回って仙台に戻りました。幾つもの名所を回ることができ、とてもいい思い出になりました。
さいごに
ハプニングもあり、苦難の坂道もありましたが、瀬戸内の景色、美味しいものをたくさん楽しめた、とてもいい旅行になりました。
東北や関東圏とはまた違った、朗らかな乾いた暖かさとでもいうような異国情緒に近い雰囲気を楽しめる、そんな瀬戸内をぜひ、機会があれば訪れていただければと思います。