フルクラムレーシングゼロ・コンペティツィオーネ、通称レーゼロコンペのリム版を、4年にわたり使用しています。21年をもって廃盤となってしまったようですが、市場在庫はまだあるかと思いますので、今回は使い慣れたレーシングゼロをインプレしてみます。
目次
レーシングゼロ・コンペティツィオーネ(レーゼロコンペ)のリムver(解説)
レーシングゼロ・コンペティツィオーネ(レーゼロコンペ)のリムver(インプレ)
はじめに:フルクラムとは?
長く自転車に乗っている方には説明不要でしょうが、このブログは初心者の方がご覧になることも想定しておりますので、先ずはフルクラムの説明を。
カンパニョーロという会社
フルクラムは、イタリアの自転車用品メーカー「カンパニョーロ」の看板違いです。カンパニョーロは、リムブレーキの自転車であればほぼ漏れなく採用している「クイックレリーズ」を発明した会社です。
※カンパニョーロの社章は、クイックレリーズレバーをモチーフにしたものです。
カンパニョーロは、SHIMANO、SRAMと並ぶ3大コンポーネントメーカーの1つです。市場のシェアはSHIMANOが圧倒的優位を占めていますが、カンパニョーロの独自の雰囲気や、操作感には一定のファンが存在します。筆者もその1人で、1台、カンパニョーロのグループセットで組んだ自転車を愛用しています。
そんなカンパニョーロは、クイックレリーズに起源を持つメーカーだけあって、高品質なホイールも製造しています。
ハイエンドのBORAシリーズはプロやハイアマチュアから幅広く支持を受けています。
ミドルグレードモデルのZONDAは比較的手の届きやすいお値段で必要十分以上の性能を得られるホイールであり、よりグレードの高いホイールを持つ人の練習輪として、また初心者のホイール交換の定番として愛されています。
フルクラム
さて、冒頭に書いたとおり、そんなカンパニョーロの看板違いが「フルクラム」となります。
公式HPを見る限りは、「自転車をこよなく愛する航空宇宙工学エンジニアが、市場分析の結果として自転車のホイールには大いに完全な余地があることを発見し、ブランドを立ち上げた」旨の記載があります。
事情としては、恐らく市場の圧倒的多数を占めるSHIMANOコンポーネントで組んだ自転車に、カンパニョーロのホイールを履かせると不似合いだと考えるユーザーに向けて、ホイールを売りたかったものかと思われます。
言い換えれば「SHIMANOに違和感なく合うカンパホイールを提供する」というのが、フルクラムの創設当初の位置づけだったものと思われます。
そんな出自を持つブランドのため、カンパニョーロのホイールと、ハブはほぼ共通です。
また、スポークパターンはフルクラムが2to1、カンパニョーロがG3と呼ばれるものですが、スポーク間の幅の違いこそあれどドライブ側に2組・反ドライブ側に1組のスポークを7組配置するというレイアウト(リムブレーキ版のミドルグレード以上の多くのモデル)は、フルクラム・カンパニョーロとも同じです。
親元であるカンパニョーロのホイールが高性能であるため、勿論フルクラムのホイールも高性能でないわけがなく、アマチュアからプロまで幅広く支持を受けています。
レーシングゼロ・コンペティツィオーネ(レーゼロコンペ)のリムver(解説)
レーシングゼロとは?
レーシングゼロは、フルクラムのアルミホイールにおけるハイエンドとなります。
これより上のグレードは、全てカーボンホイールとなります。
取り扱いに注意を要する上に高価なカーボンリムのホイールに対し、比較的頑丈でラフに扱っても壊れにくくお手頃なアルミリムのホイールの最高峰として、アマチュアに幅広く愛されています。
特徴と言われるのは、極太のアルミスポーク。ステンレススポークより反応性が高いアルミスポークが、このホイールの個性である高い反応性を生み出します。
アルミスポークと、駆動輪のリアが2to1で頑丈に組まれたホイールによる高い剛性が、レーゼロのウリとなります。
なお、皆さん気になる重量は1,475gです。
レーゼロコンペについて
ひとくちにレーシングゼロと言っても、ハブやリムの違いでいくつか小分類モデルがあります。レーシングゼロ・コンペティツィオーネ、通称レーゼロコンペは、レーゼロ一家のなかでもハイエンドにあたるモデルです。
通常版レーゼロと違うのは、ハブにカルトベアリングと呼ばれるベアリングを採用している点。カルトベアリングはカンパ・フルクラムの最高のベアリングで、曰く通常ベアリングの約9倍回り続けるといいます。
実際、空転させてみるとそれだけで抵抗が少ないのは分かるようなハブです。
なお、通常ハブからカルトベアリングに交換するとそれだけで(お店にもよりますが)5万円以上かかるという隠れた高級品です。
レーシングゼロ・コンペティツィオーネ(レーゼロコンペ)のリムver(インプレ)
レーゼロコンペ・リムverのインプレ(平地)
リムハイトが低いのもあり、平地巡航ではお世辞にも速いホイールではありません。
カンパニョーロの比較的エントリーモデルに近い、シロッコのほうがリムハイトがある分平坦では速いと感じられるくらいです。
筆者の十八番ではないですが、反応性は良いのでクリテリウムのようなダッシュを繰り返す走り方には向いているかと思います。
ディープリムホイールのように長時間の平地巡航に向いたホイールではありませんが、立ち上がりの鋭さでは一級品のホイールだと思います。
レーゼロコンペ・リムverのインプレ(ヒルクライム)
ダンシングしてもたわむような感覚などはなく、ロスなくしっかり前に進んでいきます。完成車についてくるような鉄下駄ホイールと比べると、かなりの差を感じられるかと思います。
剛性の高さ故か「まるくて硬いものを転がしている感」がしっかりとあって、シッティングでケイデンスを高めに保って回すような走り方をするとよく進みます。
ただ、剛性の高さ故かペダリングを乱すとそれがしっかり脚に返ってくるような感はあります。レーゼロを入れる時点でしなって進むような機材では無くなるので、ペダリングは綺麗に行うことを求められるように感じます。
そういう点で、長い時間の登りをこなす場合は、とかくペダリングが乱れやすいダンシングを主体とするより、シッティングで回す走り方をする方が滑らかに進めやすいホイールだと感じます。
(…筆者のダンシングにおけるペダリングが下手なだけかもしれません。汗)
なお、キシリウムプロと迷う方が多いように感じますが、筆者(キシリウムプロも所持)の場合少なくとも登りでタイムに優位な差は出ません。
ただ、キシリウムの方がリムが軽いのか、気持ちながら失速しかけた状態からのリカバーが楽な気はします。
とはいえ大きな差はなく、キャラクターとしては似通ったホイールだと感じます。
レーゼロコンペ・リムverのインプレ(乗り心地)
クリンチャーで乗る分には、かなり硬質です。他のアルミホイールと比べて劇的に悪いという訳では無いですが、剛性が高いため、悪い意味で衝撃の伝達性も高いです。
しかし、レーゼロコンペはチューブレスタイヤが使用可能です。筆者は現在ではIRC FORMULA PROを履かせていますが、チューブレスを履かせると乗り心地は激変します。むしろ、他全てクリンチャーの手持ち機材のなかで一番乗り心地が良いくらいです。
乗り心地はタイヤの寄与度が大きいものです。レーゼロコンペをご使用されている方で、乗り心地に難を感じている方はぜひ、チューブレスタイヤをお試しいただければと思います。
レーゼロコンペ・リムverのインプレ(ロングライド)
ロングライドで使うには、他にもっといいホイールが沢山あるとは思います。
加速感が気持ちよいホイールなので、注意しないと気持ちよく加速しすぎて、あっという間に脚を喰っていくホイールだからです。
とはいえ、意識的に踏みすぎないように注意すればロングライドも普通にこなせます。
大きな課題である乗り心地についても、チューブレス化してしまえば十分以上に改善できるため、問題ではなくなります。
さいごに
いかがでしたでしょうか。レーゼロは剛性一点特化のような硬派なイメージを持たれることが多いホイールですが、筆者の見立てとしてもそのイメージはそのとおりだなと感じる次第です。
しかし、レーゼロコンペであればチューブレス化にも対応しているため、剛性の代償となる乗り心地については大きく改善できます。
ヒルクライムをメインとする筆者としては、少し気をつけなければならない点はあるものの、駆動ロス少なく確実にペダリングを推進力に変えてくれる、頼れる相棒というイメージを持っています。
例えば鉄下駄などを使っていて、ホイールの柔らかさが気になる方。そんな方は、安い買い物ではありませんが、レーゼロを検討してみてください。世界が変わる…かもしれません。