「ビギナーの部屋」では、ロードバイク歴7年の筆者が、ロードバイクやクロスバイクに乗りはじめたばかりの方が疑問に思うであろうことを解説してゆきます。
ヒルクライム。自転車では得意苦手、そして好き嫌いがはっきり分かれます。
筆者はとても好きです。速さは…相対的なものですがアマチュアでは遅くはないと思います。
そんな筆者が、初心者だった頃を思い出しつつヒルクライムを走りきるためのコツをご紹介します。
目次
ヒルクライムを走り切るコツ・視点2:筋肉を温存しつつ心拍に頼る走行
ヒルクライムを走り切るコツ・視点3:筋肉に頼り心拍を温存する走行
はじめに:自転車でのヒルクライムとは
初心者の方を対象としておりますので、一応。
自転車でのヒルクライムとは、読んで字のごとく、自転車でヒル(丘)をクライム(登る)することです。
自転車で坂を登るのは、もちろん辛いことです。
そのため、速く登れることはそれだけ価値があるものとされています。
例えば自転車に詳しくない方でも一度は名前を聞いたことがあるであろうツール・ド・フランスでは、山岳ポイントというものが設定されております。
山岳ポイントは山岳コースに設定されており、高順位で通過するとポイントを得られるというルールです。
山岳ポイントを最も多く獲得した選手は、白地に赤水玉の「マイヨ・ブラン・ア・ポア・ルージュ」(「マイヨ・グランペール」とも呼ばれる)通称山岳賞ジャージの着用権を得ます。
なお、ヒルクライムを得意とする選手を「クライマー」と呼びます。代表例としては半ば神格化されているマルコ・パンターニ等が挙げられます。
ヒルクライムは、冒頭のとおり辛いものです。
何が楽しいんだと思われるかもしれませんが、その奥深さや爽快感、達成感から中毒のようになる方がかなりおられます。私自身その1人です。
上記のようにヒルクライムの魅力は人を惹きつけてやまず、また速度が比較的出ず安全性が高いのもあり、レースのカテゴリでもヒルクライムは人気が高いです。
まだヒルクライムに行ったことがない方は、ぜひ行ってみてください。
最初の頃はつらくてたまらないと思いますが、悩んだらまたこの記事を見に帰ってきてください。この記事をご参考にしていただいて、さらに登り続けるうちに段々と好きになってくるかもしれません。
ヒルクライムを走り切るコツ・視点1:筋肉と心拍
あなたの体力は、有限です。
さて、そもそも「体力」とはなんでしょうか。
自転車でのヒルクライムの場合、体力ゲージは2つあります。
ひとつは筋肉、もうひとつは心拍です。
どちらかがレッドゾーンに突入すると、どちらかにある程度余裕があっても一気に失速します。
このため、どちらをどのような配分で消費するかを考えて走らなければなりません。
比較的、筋肉に比して心拍は回復が早いです。
回復速度はどれくらいの基礎体力を持っているかにもよりますが、走行ペースを落とせば心拍はある程度の時間で回復してきます。
対して筋肉は、いったん使ってしまうとなかなか回復しません。
まずは大前提がこのようなかたちです。
ヒルクライムを走り切るコツ・視点2:筋肉を温存しつつ心拍に頼る走行
視点1の大前提をもとに、まずは筋肉を温存しつつ心拍に頼る走法です。
これは、シッティングで比較的高めのケイデンスで走るような走り方です。
サドルに腰を下ろし、比較的軽めの段に変速して、ペダルをくるくる回すような走り方となります。
だいたい毎分90回転程度。
近年では、この走り方を紹介する媒体をよく見かけます。確かに筋肉より心拍の方が回復が早いので、あながち間違っているとはいえません。
しかし、身体を鍛えていない方がハイケイデンス走法を無理に取り上げようとすると、あっという間に心拍ゲージがレッドゾーンに突入し失速します。
筋肉にダメージが蓄積するとそもそもペダルさえ踏めなくなることすらあるので、身体が出来ていない方は軽いペダルをくるくる回すほうがよいというアプローチそのものは正しいと思います。
しかし、身体を鍛えていない方の場合、無理に毎分何回転と考えない方がよいです。
勾配は絶え間なく変わりますし、90回転を維持できない坂もあると思います。そもそも90回転を登りで維持できるのは相当な強心臓だけだと思います。
長くなりましたが、初心者に寄り添った「筋肉を温存しつつ心拍に頼る走り方」の結論は、スっスっと脚が回る程度の段に変速し、回転数はさほどあげることを意識しないような走り方です。
回転数はポタリング(ゆるい走行)同等の回転数、数字でいえば毎分70-80回転程度でいいと思います。
また、登りはいかに失速させないかという視点が大切なので、勾配がきつくなったら速やかに変速して軽い段を使いましょう。また、これは基礎体力次第ですが勾配に余裕があれば速度を稼げるとなお良いです。
ただ、失速させないことは大切ですが、勾配がきつくなって段が足りなくなっても無理に踏み込まないことです。無理に失速させないように踏み込むと、あっという間に筋肉を使い切って完全に失速しかねません。
勾配がきつい坂は、失速一歩手前でいかに抑えるかが大事です。
急勾配が短い距離なら下記の休むダンシングで対応することもできます。
長い距離なら脚の重さをペダルに載せるような意識で、できるだけ踏み込まないように走るのが良いです。
サドルの前側後ろ側どちらに座るかは好みの問題ですが、前乗りは重力を使いやすい反面上手くペダルを回さないと回復が遅い前ももの筋肉に頼った走り方になりがちです。
初心者の場合は、サドルは深く腰掛けた方があまり深く考えずともハムストリングス(後ろももの比較的長時間使える筋肉)を使いやすいので良いのではないかと思います。
あまりにも勾配がきつく、後ろ乗りで踏み込めない時に、下記の休むダンシングとの択一で一時的にサドル前側に座るくらいが、ベストではないかと思います。
※現在の筆者はゲラント・トーマスばりに前乗りですが、5年くらい後ろ乗りでした。どちらの良さも分かっているつもりであります。
ハンドルは無理なく上側のフラット部分を持って、上体を起こしましょう。
ヒルクライムを走り切るコツ・視点3:筋肉に頼り心拍を温存する走行
くるくるペダルを回してきて、息が上がってきた時。くるくる回せそうにもない坂が目の前に出てきて、心拍には余裕が無いけど脚は比較的残っている時。
こんな時は、筋肉ゲージを使います。その間に心拍を温存します。
まずは、1段か2段、重い段に変速します(勾配が変わらない場合:変わるなら変速しないとか、むしろ軽い側に変速する等もありえます)。
そのうえで、ブレーキレバーに手をかけて、サドルから腰を上げましょう。
そして、腰を前に持ってきましょう。少しずつ腰を前に持ってくると、ペダルに重さをかけやすい位置にくると思います。
この位置で腰の前後移動をストップし、ペダルに交互に体重を載せましょう。
いわゆる「休むダンシング」です。回転数は毎分60くらいが目安でしょうか。
注意点は、ペダルを踏む感覚ではなく、体重を載せる感覚で走ることです。片側に体重を載せると反対側のペダルが戻ってくるので、そうしたら反対側のペダルに体重を移してください。これだけで自転車は進んでゆきます。
ハンドルは強く掴んだり、押したり引いたりといった意識をする必要はないと思います。ハンドルの赴くままで問題ありません。
バイクを振るなどという意識も無用だと思います。
色々やろうとすると腕が疲れる上、温存すべき心拍を消費することにもつながります。
効果音でイメージするなら、のしのしと登る感じで心拍を回復させつつ走ります。
ただ、休むダンシングといえどあまりやり過ぎないことです。身体が出来上がっていない方の場合、筋肉の体力ゲージはそんなに多くないはずです。
そもそも、これは筆者が180cmを超えるのも大きいかと思いますが、ダンシング自体しないで済むならばしないほうが無駄は少ないのではないかと思っています。
ダンシングに極力頼らないで済むよう、シッティングのペース配分、そしてギア比をよく考えるのがベストだと思います。
冒頭記載のとおり筋肉も使い切ってしまえば失速する上、筋肉はすぐに回復しません。休むダンシングを使う時は、心拍を回復させることを第一に意識しつつ、ゆったり走りましょう。
心拍が回復してきたらすぐにサドルに腰を戻して、軽い方に何段か変速して、またくるくる回す走行に戻りましょう。
ヒルクライムを走り切るコツ・視点4:心拍の体力ゲージ準備
走り方として基本は上記のとおりですが、前日までにできることもあります。炭水化物を沢山とることです。所謂カーボローディング。
人によりけりかもしれませんが、パン、うどん、そばは食べてもあまり効かないなと思います。自分の場合、白米、焼きそば、ラーメンならば次の日、まともに身体が動きます。
白米、前日の晩に頑張って2合くらい食べておくと、次の日は身体がよく動くと思います。ただしやり過ぎるとお腹を壊すので注意。1合でも結構違います。
あとは、しっかり睡眠しましょう。
また、寝起きからすぐは身体が動かないので、要注意です。
ヒルクライムを走り切るコツ・視点5:筋肉ゲージの浪費を防ぐ
筋肉ゲージの浪費を防ぐには、腰周りを拘束しないようにすることです。
リュック、ウエストポーチなどバッグ類を身につけるのは出来ればやめた方がいいです。
サイクルウェアもバックポケットには出来れば何も入れないのが望ましいです。
また、あればですがサイクルウェアは腰にゴムが入っていない、肩紐付きのビブショーツが良いです。
装備は最小限に。ゆく場所にもよりますが理想は、お金と身分証、パンク修理関係と最小限の工具、鍵と携帯電話だけに絞ることでしょうか。
お金もお財布ではなくジップロックを使うなどすると良いです。
これらのものを何処に車載して走るかですが、ベストはフレームバッグです。
サドルバッグは、(自分自身使っておりますが、)ダンシングの振りを重くする原因となります。使うにせよ小さなものを使いましょう。
さいごに
ヒルクライムは、冒頭記載のとおり好き嫌いが分かれます。
確かに辛いのは事実です。
しかし、登った先の景色の綺麗さは大きな感動、達成感を生みます。
また、どうすれば速く、楽に登れるか試行錯誤するのは非常に奥深いものです。
辛い反面、魅力もたくさんのヒルクライム。1人でもたくさんの人がハマってもらえると、とてもうれしいところです。